スティーブ・ジョブズ-偶像復活

スティーブ・ジョブズ-偶像復活
著者:ジェフリー・S・ヤング ウィリアム・L・サイモン 井口 耕二(訳)
出版社:東洋経済新報社
発売:2005
★★★★★

コンピューター、映画、音楽の3つの産業に革命をおこした「ミスター・インクレディブル」。アップル追放後の、CGアニメ映画の開拓、アップルCEOへの復帰、そして音楽ビジネスへの参入などの「第2幕」を描いた評伝。

偉大なる伝道師スティーブ・ジョブズの半生を綴ったアップル本。本人によるエッセイではないですが、ジョブズの精神的な葛藤がよく描かれていて面白いです。ジョブズの歴史を通じて、Appleジョブズが関わった企業の歴史にも触れることができて、ちょっと文量は多いですが読み応えのある良書だと思います。補正がかかって★五つです^^
ジョブズが関わった技術の進歩についても学ぶことは多くて、2005年のマックワールドでのジョブズの言葉が印象深く残りました。以下に引用します。
「あなたや僕が新居に入ったら、まず、電話会社に連絡して電話を使えるようにしてもらうよね。でも、若者は、携帯電話を持って引っ越すだけだ。ステレオも同じ。若者はステレオなんか買わない。iPod用のスピーカーを買うんだ。それが今のオーディオ市場なんだ。JVCやソニーのステレオを買う代わりに、iPodとボーズのスピーカーを買うんだ。(後略)」
こうしてみると、私たちのテクノロジーとの関わり方はどんどん変化していて、「持てない」時代から「持てる」時代へと移り変わっていることに気付きます。iTunesiPodによって、音楽を聴くスタイルを大きく変えたジョブズ率いるAppleが、この変遷に大きく関わっている事は疑いようもありません。
クラウドコンピューティングを利用した様々なサービスがトレンドになっているように、持てる時代から、「持たない」時代へと再び変化しつつあります。今はまだその過渡期です。ウェブアプリケーションに全てを任せることはまだ難しいですし、膨大なデータを個人がネットの向こう側で管理するなんてことも同様。AppleにもMobileMe(かつての.Mac)やiWork.comといったサービスはありますが、今では他のサービスと一線を画すほどではありません。ジョブズが完全復帰するのであれば、彼が再び新しい時代を切り開いてくれる事を切に願います。