シュレディンガーのチョコパフェ

シュレディンガーのチョコパフェ (ハヤカワ文庫JA)
作者: 山本 弘
出版社: 早川書房
発売日: 2008-01

キャラグッズの買い物につきあってくれる裕美子は、俺にとって最高の彼女。でも、今日のデートはどうにも気分が乗らない。久々に再会した旧友の科学者、溝呂木がこの世界の破壊を企んでいるらしいのだ──アキバ系恋愛に危機が迫る表題作、SFマガジン読者賞受賞の言語SF「メデューサの呪文」、孤独なサイボーグの見えざる激闘を描く「奥歯のスイッチを入れろ」ほか7篇を収録。『まだ見ぬ冬の悲しみも』改題文庫化。

SFってのはIFの世界(アイディアともいう)がもっともらしく理論的に構築されているのを楽しむものですよね。この作品は短編集なので、世界崩壊・サイボーグ・生体宇宙船・時間跳躍などなど、多種多様な世界を堪能できてすっかり満腹です。特に面白かったのは「シュレディンガーのチョコパフェ」と「奥歯のスイッチを入れろ」の二編です。前者は、因果律が乱れて世界が崩壊・変動していく過程で、文の上での表現もどんどん変わっていくのが面白かった。どこが変わったのか自分でもついていけなくて何度も読み返していしまいました。後者は設定自体はありがち?重症の怪我を負って手術→サイボーグシャキーン!ただ、実際に元人間がサイボーグ、それも超高速行動と超高速知覚を搭載しアモルファス装甲に身を包まれた戦闘用サイボーグに変身したとき、世界がどのように変わって見えるか、感じられるのか?それがこれでもかというほど細かく合理的に描写されていて体感に近い体験が出来たことに感動。
逆に、面白くないというわけではないんですが、難解だったのは「まだ見ぬ冬の悲しみも」でした。単なるタイムリープもので終わるのかと思いきや、最後に予想だにしていなかった結末が・・・。ただその最後の部分がちょっとむつかしかった^^;未来が分岐しているのはありきたりですが、過去にも枝分かれしている?どゆこと?量子のゆらぎは「宇宙を復号する」で予習ずみだからすんなり受け入れられました。正確に過去との量子情報を交換できる場合と出来ない場合が量子のゆらぎによって無限の可能性となりパラレルワールドを生み出す。だから全く同じ過去に戻れた世界と、違う過去に戻ってしまう世界が生まれる。ということでいいのかしら^^;そうすると、並行宇宙の説明によく使われる一方通行の枝分かれ図が当てはまらず、もはや私の脳はオーバーフロー寸前・・・そのうち私は考えるのやめた。まぁ基本的にはハードSFってほどでもないので読みやすいと思います(文系の私が楽しめたのだから)。山本弘氏の他の作品もチェックしてみようかな・・・