砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない


原作:桜庭一樹
漫画:杉基イクラ
発行:富士見書房
★★★★★
なんとなく立寄った本屋さんで手にしたこの二冊。結構コミックなんかが充実していて、最初の数ページだけ立ち読みが出来るように工夫がされていたりとなかなか先進的?な書店なんですが、この「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」も上の数ページだけ立ち読みが出来るようになっていました。タイトルだけはどこかで耳にしていたこともあって、気になり、手にとって読んで、その数ページで「ああ、なるほど」と理解しました。主人公の山田なぎさにまとわりつく鬱屈。転校生の海野藻屑の電波っぷり。これは当りだという確信。月末で金もないというのに上下セットでレジに持ち込むことに迷いはほとんどありませんでした(財布と相談して少し悩みましたが^^;)

原作とコミックでは大きく構成が異なるそうなのですが、原作の方は未読なので特に触れません。どうも小説の方は古畑任三郎よろしくはじめに結末ありきで進むそうです。

あぁそれにしても切ないですね。杉基イクラの繊細な絵によって登場人物たちの感情がよく描かれていて、彼女ら彼らの抱える夢、希望、淡い恋、友情、そして絶望、それらがひしひしと既にその時期を過ぎつつある私にも伝わってきました。特に少女たちの儚さ、早く大人になって自分を取り囲む全てのものに対抗する力が欲しい、けれど今の自分たちは余りにも無力で結局のところ家や学校、住み慣れた町という閉鎖空間にしばられ、社会に訴える力という実弾は持ち合わせていない、あるのは影響力のないささやかな抵抗、そんななぎさと藻屑の少女性が私の心を捉えて、藻屑に用意されたあまりにも受け入れがたいカタストロフは私の心をギュッと締め付けて苦しめるのです。彼女が本当に人魚で泡になって消えてくれたのならよかったのに・・・

藻屑の不幸をいったい周りがどうしてやれたのか?自覚のない被害者を救うことは出来たのか?あるいは救うなんておこがましい行為ではなく藻屑が立ちあがるべきだったのか?現代社会でも問題になっているこの児童虐待という行為の不可解さ、解決の困難さがこの漫画をやけにリアルに感じさせ、だからこそいっそうキャラに感情移入し結末で涙を流すこともできるのでしょう。最後の教師の悲痛な叫びが頭のなかで繰り返されます。

「ああ海野・・・生き抜ければ大人になれたのに・・・だけどなぁ海野・・・おまえには生き抜く気があったのか・・・・・?」

大学生になり、バイトもするようになって、この社会に生きる自分という銃に着実に実弾を装填しつつある私ですが、この作品に出会ったことで、必死に砂糖菓子の弾丸を撃ち続けてべたべたになって苦しんでいたあの頃と、そして今でも少しべたついている自分がいることを思い出せました。大人になるって・・・すごく遠くて難しいのかなぁ・・・。

関係ないけどなぎさ曰く王子系のおにいちゃん友彦くんがなんとなくツボです。あと花名島くんすっごく気持ち悪いです。ドMですか?吐き気がします。ぜひ友達になりましょう。

原作はどうしようかな・・・出会いがあったら読んでみるか・・・。